園からのお知らせ

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認定こども園捜真幼稚園2017年7月園だより

「愛を欠いた正しさの怖さ」

「怒るのに遅いようにしなさい。人の怒りは神の義を実現しないからです」(ヤコフの手紙゙1:19-20)。
千葉県香取市の「伊能忠敬記念館」の一角に、南を上にした「上下さかさまの世界地図」が展示してあります。わたしも同じ地図をオーストラリア旅行をした知人からお土産にいただきました。”宇宙には上も下もないのだから、南が上でも良いではないか”という皮肉をこめたユーモアでしょう。さらには、”同じ世界でも視点を変えると全く違って見える”ということをも示しています。今、手近に世界地図・日本地図があったら是非さかさまにして見てください。北が上の地図を見慣れている目には違和感があり、どうしても北を上にして見たくなります。しかし、南が上の地図が「間違っている」わけではありません。(ただし、オーストラリアでも、学校や日常生活では北が上の一般的な地図が使われているそうです。)

「人間関係を壊すのは『正しい人』である」というのがわたしの持論です。つまり自分の見え方だけを正しいとし、他の見え方は間違っていると決め付ける人がトラブルを起こします。「私はこのように考える。私にとってこれは違和感がある」と主張することが悪いのではありません。上下さかさまの地図を見たときに、最初から「間違っている」と決め付けることが問題なのです。自分の認識が少なくとも部分的・一面的であることをわきまえていれば、より真実なことに出会い自分の不十分さや間違いに気づいたときに改めることもできますし、考え方を広げることもできます。しかし「正しい人」はいつでも自分の見え方だけが正しいと思うので、異なる意見や考え方に出会うと、それは相手が間違っていることになり、相手を正そうとばかりするので、対話は難しくなります。

「愛」とは、相手の存在を尊重し相手の立場に立って理解しようと努めること、言い換えれば、相手の視点からも現実を見ようとすることです。相手が「さかさまの地図」を提示したとき、たとえ違和感を覚えても、必ずしも「間違った地図」ではないかもしれないと留保することです。私は園の教職員に常々このようなことを言っています。「子どもは成長途上ですが、不完全な人間ではありません。三歳には三歳の人格があります。子どもの人格を尊重し敬意を払いましょう。たとえおかしな言動でもそれを大人の視点で頭ごなしに叱るのではなく、子どもの目線で、しかも、子どもの側に立ってどのように見えているのか、どのように感じているのかを理解することに努めましょう。」そうすれば、より適切な関わりができるし、更に、大人は子どもから学ぶことさえできるのです。このような態度は、子どもに対するときに限ったことではありません。個人であれ国家であれ、真実を求めるのではなく、自分の正しさだけに固執することは、他者への敬意を欠いているのであり、関係を壊すのです。
さて、ここまで読んできて、「この文章をぜひあの人にも読ませたい」と思い当たる人が身近にいるかもしれません。でも、そう思うあなたは「正しい人」になってはいませんか?自戒をも込めて・・・。

  

理事長・宗教主事 小野 慈美
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