園からのお知らせ

NEWS

認定こども園捜真幼稚園2023年2月園だより

今、私を生きる

私の好きな絵本作家の一人に浜田桂子さんという方がいらっしゃいます。作品は、『あやちゃんの生まれた日』、『あめふりあっくん』、『てとてとてとて』など、最近では『へいわってどんなこと?』が注目されていました。研修も様々なジャンルがあり、どの研修もとても勉強になりますが、私は個人的に絵本作家の方のお話を聞くのが大好きです。浜田桂子さんにお会いしたのは、今から15年くらい前だったと思います。先生のふんわりした優しさに包まれるように、気持ちよくお話を聞いたのを思い出します。ちょうど『あめふりあっくん』が出版される時で、どんな思いでこの作品を作ったのかを話してくださいました。保育園にやってきたあっくん。お母さんと離れたくなくて、鞄もかけたまま縁側で泣いています。そのあっくんをなだめるために次々と子どもたちがやってきては試行錯誤。そんな中で、お天気は崩れ始め、雨が降ってきます。一人の子が、空から降る雨と、あっくんの目から流れる雨が競争しているみたいと言います。みんなはあっくんを応援します。しだいにお外の雨は止み、あっくんがあめふりチャンピオンになります。あっくんはみんなに拍手され、嬉しいような恥ずかしいような気持ちになり、泣くのはもうおしまいにしました。この物語には、大人が出てきません。絵としては、はじめと終わりのページに先生の姿があります。背表紙には、お迎えに来たあっくんのお母さんの姿があります。でも言葉の描写はありません。浜田先生は、子どもが「家族」という個人的な関係から、初めて「友だち・仲間」という社会的な関係を自分で作っていくという場面を描きたくて、大人はあえて登場させなかったとおっしゃっていました。子どもたちが子ども同士、共感とつながりの中で成長していく姿を、浜田先生はあっくんと保育園の仲間たちに託して作られたそうです。
『へいわってどんなこと?』では、様々な角度から平和とは何かを探り、さいごに、“へいわってぼくがうまれてよかったっていうこと。きみがうまれてよかったっていうこと”とあります。絵本を購入した時、その帯に書かれている浜田先生の言葉に“子どもたちに伝えたいのは、「生きているってすてきだよ」ということです。いのちより優先されるものは何もない。平和とは、いのちがまるごと認められ、大切にされること。その思いを、私はいつも作品に込めています。”とありました。この記事を読んで、浜田先生の “託して”作る、“込めて”作る姿勢に、聖書の言葉とつながるものがあるように感じました。
 『神は、独り子を世にお遣わしになりました。その方によって、私たちが生きるようになるためです。ここに、神の愛が私たちの内に示されました。私たちが神を愛したのではなく、神が私たちを愛して、私たちの罪を償ういけにえとして、御子をお遣わしになりました。ここに愛があります。』(ヨハネの手紙Ⅰ4:9-10)
神様は“私たちが生きるようになるために”イエス様を与えてくださいました。イエス様の愛は、このままの“私”を受け止めてくださり、“私”を“私らしく”成長させてくださり、生かしてくださる愛です。
あめふりあっくんが、僕はお母さんと離れたくなかったんだと懸命に泣いたのは、今を生きる姿そのものです。そして友だちとの関わりの中で、泣き顔は笑顔になりました。自分のストーリーを生きる時、泣くことしかできない時もあります。ひとりぼっちの孤独に向き合うこともあるかもしれません。どうしたらよいのか途方に暮れることもあるでしょう。けれども、どんな時にも、私たちの歩みにはイエス様が共にいてくださいます。決して一人ぼっちになることはありません。今ここに生きる私たち一人ひとりが、世界に一つしかないストーリーを精一杯生きていきたいですね。                 

主幹保育教諭  黒坂綾子

ページのトップへ